「個人事業主として今の会社から独立したい」
「子育てをしながら在宅でしっかり稼ぎたい」
このように考えている方は多いのではないでしょうか?
時間や場所に囚われない働き方や、職場での煩わしい人付き合いが無くなるなどの利点から、日本のフリーランス人口は増加傾向にあります。
しかし、不安定な収入や作業量の多さに、挫折やメンタル面の不調を起こす方もいるのが現状です。
この記事では開業を考えている方に向けて、個人事業主のメリットやデメリット、必要な申請などについて解説しています。
目次
個人事業主のメリット
個人事業主のメリットは以下の4点が挙げられます。
- 低い初期コストでのスタートアップ
- 自分らしい働き方を実現
- クライアント(顧客)とのダイレクトな関係性
- 自分だけのブランドを築く機会
それぞれ見ていきましょう。
低い初期コストでのスタートアップ
初期コストの面でいえば、個人事業主として活動するのがもっとも初期コストが少ないと言えます。その理由として以下が挙げられます。
- 初期コスト(開業準備枠)を経費にできる
- 会社設立の手続きは20万円程度の費用がかかる
- 事業規模を個人でコントロールできる
会社を設立する、つまり法人化する場合には収入印紙代や登録免許税などによって20万円程度の初期コストが必要です。
しかし、個人事業主は申請用紙にハンコを押すだけで承認されるため、登録費用はかかりません。
さらに、数百万円程度の売り上げであれば法人税よりも個人事業主の方が納税額を抑えられます。
小規模事業を考えている場合は、まずは個人事業主として登録した方が長期的にもコストの軽減に繋がります。
自分らしい働き方を実現
個人事業主は従業員を抱えていなければ、勤務時間・場所・業務形態など働き方を自由に選択できる裁量権が得られます。
会社員であれば、社内規則に乗っ取り就業時間や勤務日数が定められているだけでなく、融通が聞きにくい場面も多く、仕事に合わせた生活になりがちです。
個人事業主であれば、生活様式や趣味に合わせた自由な働き方がしやすいため、メリットの一つとして挙げられます。
クライアント(顧客)とのダイレクトな関係性
個人事業主は営業から納品までを一貫して行う必要があります。この工程が行えるのも個人事業主としての大きなメリットです。
その理由として以下の3点が挙げられます。
- 中間業者を通さず業務を請けられる
- クライアントと深い関係を得られやすい
- 評価されやすくキャリアアップしやすい
中間業者とは、依頼主と生産者の間を仲介し、その手数料として中間マージンを受け取る業者です。
この中間マージンには、依頼主とのスケジュール調整や製品の品質担保といった業務も含まれています。
中間業者の業務は、生産者にとっては工程の短縮やフィードバックを受けられるメリットがありますが、報酬が低単価に設定されている場合も多いです。
そのため、中間業者が行っている業務も請け負うことができれば、収益を増加させられる可能性が高くなります。
また、この働きや納品物が評価されれば、より大きなプロジェクトを任せられる場合もあります。
このように中間業者を省略したビジネスを展開できるのも、個人事業主の大きな魅力です。
自分だけのブランドを築く機会
自分の名前で活動する個人事業主は、個人の強みや専門性を顧客に押し出せる魅力があります。
この個人的な強みを押し出す活動をパーソナルブランディングといいます。
会社員であれば、良い仕事をしても会社として評価されやすいですが、個人での活動は、個人そのものが評価されます。
そのため、人柄やスキルが評価に反映されやすいです。顧客に信頼されることで、依頼の増加・単価の向上・選択権など、自分の働きぶりによって仕事のしやすさを向上させられます。
個人事業主のデメリット
個人事業主のデメリットは以下の3点が挙げられます。
- 一人でのリスク負担
- 税務手続きや業務管理の難しさ
- 不安定な月収と安定した収益の難しさ
個人事業主になり理想的な生活を手に入れたという方がいる一方で、税務や不安定な収入から会社員に戻る方もいます。
個人事業主になるには、しっかりとデメリットも把握しておきましょう。
一人でのリスク負担
個人が原因で事業を失敗させてしまった場合、やり直し・依頼の取り消し・最悪は損害賠償などのリスクがあります。
会社員であれば、業務の責任は会社・上司・担当者などに分散されます。
しかし、個人事業主として個人で活動している以上、事業の失敗やトラブルは一人で対応しなければなりません。
また、口コミによって悪い評価が出回ってしまうと、依頼の減少・単価の値下げなど悪循環になってしまうケースも考えられます。
税務手続きや業務管理の難しさ
個人事業主は自らのスキル向上や業務だけでなく、税についての知識も身につける必要があります。
個人事業主として活動する場合、売上と経費の差額から利益を算出し、管轄する税務署へ年末調整や確定申告といった書類を提出しなければなりません。
個人事業主は、開業時に青色申告を申請しておくと最大65万円の所得控除を受けられます。
ただし、65万円の控除を受けるには、経費枠の詳細や売上・預金などの細かなお金の流れを記載した複式簿記である必要があります。
正しい確定申告を行わなければ、税務調査によって追徴課税が課せられる場合もあり、お金の管理や慣れない申告書の作成に苦労する人は多いです。
不安定な月収と安定した収益の難しさ
フリーランス協会が850人の個人事業主を対象にアンケートをとった『フリーランス白書2023』によると、単発の仕事を受けている方が全体の32.9%となっています。
1年以上の契約ができているのも、24.2%と常に仕事を請け続けなければ収入を得られていません。
また『今の働き方に対する満足度』という題目では、収入に不安を感じている方が42.4%、どちらでもない方が25.3%と満足と回答している方は32.4%でした。
ほとんどの方が不安定な収入に不安を感じており、安定した収入を得られているのは一握りであるとわかります。
このようにスキルや経験が伴っていても、個人事業主が常に収益を保証するのは難しいものです。
個人事業主としての必要手続きとは?
個人事業主になるには、以下の届出を把握しておきましょう。
- 開業届
- 税務申告
- 業種ごとの特別な届け出や許可
開業届と税務申告は、個人事業主になる場合は必ず提出する事項です。
飲食店や販売など、店舗を持つ場合は3点目の項目も重要ですので、最後まで目を通してください。
開業届をきちんと提出
開業届は、正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。
開業届に記載する項目は以下の通りです。
- 活動拠点住所
- 氏名・マイナンバー
- 業種
- 屋号
- 開業日
- 青色申告承認申請書の有無
- 事業の概要
- 従業員人数と給与の支払いについて
- 関与税理士(必要に応じて)
開業届の提出は事業を開始する前から開始後1ヶ月以内が目安となっています。
この期限を過ぎても罰則はありませんが、開業日に合わせて一緒に準備しましょう。
また、銀行から融資を受けたり事務所を賃貸したりする場合にも、開業届の控えが必要な場合があります。
会計ソフトでは開業届を簡単に作成できるサービスを行っているものもあります。記入に不安がある方は会計ソフトのサービスを視野に入れておくと良いでしょう。
正確な税務申告の手順
個人事業主は主に1年間の売上と経費を計上し、発生した利益と帳簿を、翌年の3月までに確定申告する必要があります。
また、個人事業主の税務申告には、青色申告と白色申告があります。概要は以下の通りです。
税務申告 | 概要 |
青色申告 | 対象:不動産、事業、山林
控除:10万、55万、65万円 赤字:以後3年繰越し 記帳:複式簿記 |
白色申告 | 対象:不動産、事業、山林
控除:なし 赤字:なし 記帳:簡易的でよい |
参考:青色申告
参考:白色申告
青色申告は記帳の仕方や申告方法によって控除額が変わります。
55万円以上の控除を受ける場合は、貸借対照表と損益計算書が記載された複式簿記を用いる必要があり、65万円の場合は複式簿記をe‐Taxで申告する場合に限ります。
さらに、青色申告は赤字分の損益を以後3年繰越できるので、翌年の利益から前年の赤字を差し引いて申告できます。
対して白色申告は、記帳が収支の内訳のみでいいものの、控除等はなく確定申告が簡単というくらいしかメリットがありません。
業種ごとの特別な届け出や許可
特別な許可が必要な業種は以下の通りです。
- 飲食業
- ナイトビジネス
- 医療・福祉
- 宿泊業
- その他
飲食店や民宿などの宿泊業は、消化器や避難口などを規定に乗っ取り配置し、消防署へ『防火対象設備使用開始届』を申請し許可を得る必要があります。
また、深夜12時以降にお酒を提供する場合は警察署へ『深夜酒類提供飲食店営業開始届出書』や、飲食店の場合は保健所へ『飲食店営業許可書』などの届出が必要です。
まとめ
個人事業主は自身の生活様式に合わせた活動を少ない初期コストで行えるメリットがある反面、会社の経理が行っていた税務手続きを自分で行う必要があります。
さらには、事業内容によって税務署以外にも保健所や消防署、警察署や労働基準監督署などでの手続きが必要な場合がありますので、開業する業種の下調べが重要です。
さらには売上と経費などの帳簿作成も必要になり、事業以外にも気を配ることが多くなります。
しかし、収入を増やすことも、業務量をコントロールすることも自分が判断できます。
目指すライフスタイルを確実なものにするために、必要な手続きや申請を事前に把握しておきましょう。