企業におけるインフレ対策の値上げの重要性やタイミングの決め方、事例について解説!

インフレ対策 | 値上げの重要性、成功のコツや事例について解説!

2023/10/24

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社会全体でが値上げが起こったことを受けて、多くの会社も値上げを決めるケースが少なくありません。

しかし、生活に関わるサービスを提供する中小企業の経営層は、「いつ・どのタイミング」で「どのくらいの金額」を値上げすべきか分からない方もいるでしょう。

そこで、インフレ対策の値上げが重要な理由やタイミング、成功のコツなどについて解説します。

インフレ時、なぜ値上げ検討を行う必要があり、重要なのか

インフレ時、なぜ値上げ検討を行う必要があり、重要なのか

インフレ時に物の値段が上がることはよく知られています。ここでは、中小企業が値上げする重要性について説明します。

なぜ値上げを行うのか

値上げするのは、インフレを背景に、売り上げが変わらずとも、中長期でみれば利益率が低下している可能性があるからです。

そもそもインフレとは、物の価格上昇が続くことです。インフレの背景にはさまざまなものがあります。

  • 原料・燃料(石油)価格の上昇
  • 賃上げ
  • 国際為替の変化
  • 税制の新導入など

お金の価値が相対的に減ってしまうため、インフレ時に、企業は値上げを実施します。値上げがまだの企業も、状況に応じて値上げを検討することになるのです。

値上げの重要性

まず、値上げの目的は、企業が自社の経営を安定させて、今後も事業継続できるようにすることです。廃業・倒産や赤字による経営難を防ぐこととも言い換えられます。

インフレ時に、無理に価格を同じままにして赤字が増えれば、顧客が増えたとしても「薄利多売」で経営の安定化は望めません。そこで、値上げが重要な理由は、売上金額の増加と利益率の改善をすることです。

1つの商品の値段が上がれば、1件売れたときの売上も同時に上昇します。利益についても、値段が同じだと利益は下がるため、利益率は下がりますが、値上げすることで利益率も改善されます。

特に、人数が1~5人と少ないところは、企業の体力がなく、インフレ時の売上や利益の低下は大きく影響します。つまり、総合的な判断をした上での値上げが必要となるのです。

値上げで検討すること

値上げで検討すること

値上げを検討する場合、以下のような項目を考慮して決める必要があります。

  • 値上げする金額
  • 対象サービス/商品
  • 値上げのタイミング
  • 売上や利益の変動予想シュミレーション

値上げする金額

最初に、「いくらまで値上げするのか」を決めます。そこで、「バリューベースプライシング」の考え方を取り入れましょう。

バリューベースプライシングとは、消費者視点で商品価格や価値を決めることです。上記の方法では、「知覚価値」とコスト(原価・材料費ベース)をあわせた「バリューベース」でサービス・商品の料金が構成されています。

インフレの際に、「顧客がいくらまでならその自社サービス・商品に対して支払っても問題ないか」を経営者が判断します。想定金額を決めるときは、知覚価値を推定するために、ターゲットの特定や意識調査・アンケートなどを実施します。

以上を踏まえて、最終的な値上げ価格を決めます。

対象サービス/商品

インフレ時にすべての商品を値上げするか、一部の商品のみにするかは、中小企業の経営者が判断することになります。

特に、生活に関わるサービスを提供する中小企業の経営層にとっては、主に業務で使う用品(工具、消耗品)や燃料がインフレでコストを押し上げます。そこで、商品のコストや利益から価格を決めることになるでしょう。

例えば、契約件数(売上数)の多い商品は、値段を少し上げるだけで売上全体の上昇や利益の向上に繋がります。しかし、安易に値上げすると、低価格に魅力を感じていたユーザーの顧客離れを引き起こすのです。そのため、値上げ対象商品は、個別に判断する必要があります。

値上げのタイミング

値上げをするときに大事なのがタイミングです。値上げのタイミングは、以下の3つがあります。

(1)インフレが起こり始めてからすぐに
(2)実際にインフレが起こる前(インフレ予兆の合ったとき)
(3)インフレの起きた少し後

インフレの直後に値上げすることは、原料費や燃料高騰のダメージを最小限にできます。しかし、インフレの実感がまだ少ない消費者側が「値上げに納得できない」ことも珍しくないため、失敗も目立ちます。

インフレが起こる前に値上げした場合は、最もリスクの高いものです。インフレだけを理由にして値上げすることは、たいていは失敗します。消費者には理由のない値上げに映るためです。

インフレの起きた少し後は、どのタイミングで価格を変えるかでも変わってきます。周囲の企業が値上げを決めた後(3ヶ月~半年以内)やインフレの上昇幅が伸び切った後など、様子見をしている間に経営が傾こともあるため、タイミングの判断は状況を見てよりシビアに行われるべきです。

売上や利益の変動予想シュミレーション

値上げは、したらそれで終わりではなく、「値上げ後の結果」を予測する必要があります。シュミレーション結果に問題があれば、値上げの再検討を必要とするためです。

特に、インフレ時の値上げの主な狙いは、売上金額の増加と利益率の改善です。逆に大きく低下する結果になるとシュミレーションでわかれば、値上げが難しくなります。結果に問題がある場合は、値上げ金額や対象商品、タイミングなどを見直すことです。

値上げすべきタイミングはどのように決めるべきか

値上げすべきタイミングはどのように決めるべきか

検討項目に取り上げた値上げのタイミングはいつどのようにして決めるべきでしょうか。実際に、タイミングがわからない経営者の方も多いでしょう。そこで、以下に判断の指標となる2つのポイントをお伝えします。

利益率が下がってきている

値上げすべきタイミングとして、まずは利益率が下がってきているときが挙げられます。価格を変えずに利益率が下がるのは、サービス・商品に必要なコストが利益を圧迫しているためです。

確かに、企業の多くはある程度までは利益率が下がっても価格を大きくは変えません。しかし、インフレはコストの利益圧迫が継続するため、どこかで価格を切り替える必要が出てきます。企業経営に支障が出る利益率を計算して、その前に値上げすべきです。

仕入れ値が上がっている

値上げすべきタイミングに、小売業に多いのが卸売業者やメーカーが提示する仕入れ値の増加です。利益率の減少が少しでも、仕入れ値は明確に金額としての変化がわかりやすいでしょう。

仕入れ値の上昇が始まったら警戒し、上昇幅が許容範囲を超える前に値上げすべきです。以上をタイミングとして判断するようにします。

値上げ幅の決定方法と実例

値上げ幅の決定方法と実例

値上げの時、経営者が気になる点が「金額の上昇幅をいくらにするのか」です。ここでは、決定方法と実例について具体的に紹介します。

実例イメージ

実例イメージとして以下に2社(A社・B社とする)の金額を決めるプロセスを確認します。

【3,000円の基本料金→5,000円に値上げしたA社のケース】
A社はインフレも加わって経営の見通しが悪くなっていたことです。そこで、金額を大幅に上昇し、1人あたりの売上を大きく引き伸ばすための大幅値上げをすることに決めます。

2,000円を値上げしたケースでは、顧客の30%が競合に奪われましたが、売上は16%増加し、利益率も改善する結果を得ています。

【3,000円の基本料金→3,500円に値上げしたB社のケース】
B社では、安くサービス・商品を提供することで、ギリギリまで値上げを遅らせて、価格幅も最小にする判断をします。3,000円の基本料金を3,500円と500円だけ引き上げて、値上げ幅を低く見せたケースです。

その結果、顧客の20%が競合に奪われただけでなく、売上も7%減少し、利益率も悪化したのです。

以上のケースからわかるように、値上げをするだけでは、失敗もありえるのです。顧客が一定割合奪われたとしても、最終的な売上や利益率が上がれば成功となります。

B社のように、値上げを恐れて後手に回り、結局、値上げしきれずに、減収や利益の低下が起こることもあるので、値上げの金額決定には注意が必要です。

値上げを成功させるTIPS

値上げを成功させるTIPS

値上げを成功させるためには、以下のような4つのコツを押さえることです。

付加価値を付ける

値上げした価格に見合った商品と消費者から思われるように、コツとして付加価値を付けて提供することがまず1つです。例えば、無料アイテムを1つ特典として付ける「プレゼント」、サービスを増やすなどです。

プレゼントの具体例には、以下のような商品に同封したり、直接手渡ししたり、郵送等でプレゼントしたりすることが挙げられます。

  • お掃除グッズ・除菌グッズのプレゼント
  • 口コミでAmazonギフト券プレゼント
  • 限定ノベルティのプレゼント

上記を分類すると、「無料で差し上げるもの」、「何らかのアクション(口コミを入れるなど)と引き換えにするもの」の2種類です。自社独自の限定ノベルティなら、市場価格と比較されずに、お得感をユーザーが味わえます。

Amazonギフト券や楽天ポイント、電子マネーなど、ユーザーに使いみちを選ばせるギフトカードもプレゼントとしては人気があります。

その上で、プレゼントする場合は、自社が渡しても不自然ではないものにしましょう。

また、プレゼントの方法以外にも企業によっては自社ポイントサービスの付与、口コミ時の商品代金割引、自社サポートの追加など、業界や経営層の考え方で付加価値の付け方は実にさまざまです。

 

ターゲット層をサービス・商品ごとに見極める

同じ会社の商品であっても、商品名・個数(サービス名・回数)の違いで利用する顧客層には違いが出ます。

「たくさん利用したい人」と「少しだけ利用したい人」では、ターゲット分析を行うことで異なる点が浮き彫りになるのです。

ターゲットの年齢や地域、趣味趣向などを前提に、値上げをすべきか否か、するならいくらか、などを決めましょう。

HPのデザインを一新する

値上げしても不自然ではない方法としてHPのデザインを一新することです。

高級感があるサイトデザインにすることでユーザーからも違和感を抱かれにくいでしょう。

ただし、デザイン変更はサイト修正の中でも費用と期間がかかる作業ですから、インフレが起きてから対応するまでの時間が長期化する可能性はあります。

そのため、小規模な企業が内製ではなく外注で依頼すると変更したいタイミングに間に合わないため注意が必要です。

顧客コミュニケーションを大事にする(謝罪と堂々さ)

インフレの初期に、値上げするのを控える会社も多いですが、時間が経つと値上げがある程度当たり前になってきます。

そこで、「値上げの波に逆らえない」という情勢・タイミングに値上げします。堂々と「~円値上げします」とホームページや店頭に掲載し、謝罪するコメントなどを入れると効果的です。むしろ、こっそり値上げするステルス値上げは逆効果です。

ただし、値上げするサービス・商品は普段使われている本筋・定番のものである必要があります。

顧客もよくわからないサブのラインナップ(利用があまりないサービス)を値上げしても、より使われなくなるだけです。もともと大して使われないサービス・商品を値上げしても利益には影響が出にくいので、価格はそのままか、少しだけ上げるようにしましょう。

インフレ対策の値上げのまとめ

インフレ対策の値上げのまとめ

今回は、インフレで値上げする際のポイントとして、値上げをする重要性やタイミングの決め方、金額決定の事例、値上げのコツなどを紹介しました。

中小企業の経営層で特に1~5名程度の業務委託で仕事を回している個人事業主にとっては、インフレは影響が大きいため、確実に対処したい社会経済の変化です。上記を踏まえて、値上げのタイミングや金額を知り、コツを押さえた成功する値上げをしましょう。