結論からお伝えすると、個人事業主になるには所轄の税務署に開業届を提出すれば、個人事業主を名乗れます。
しかし、その後の事業展開や必要な手続きを把握しておかないと、事業がままならなくなることも多いです。
この記事では個人事業主になるにあたり、必要な手続きについて解説しています。
個人事業主になりたい、また開業を考えている方は本稿をお役立てください。
目次
個人事業主とは
個人事業主とは、法人化せず個人で事業を営んでいる人を指します。
フリーランスとも呼ばれ、呼び方の違いに定義はありません。
所轄の税務署に開業届を受理された時点で個人事業主として活動できます。
個人事業と法人の違い
個人事業主と法人の違いを以下の表にまとめました。
経営形態 | 概要 |
個人事業主 | 設立・運営の手続き:開業届の提出のみ
税金:事業所得に対して所得税 責任:事業で負った債務は、個人財産で責任を負う |
法人 | 設立・運営の手続き:定款の作成、登記などの手続きが必要
税金:売上に対して法人税、法人住民税、法人事業税などの地方税 責任:法人財産で責任を負う |
このように、法人は個人事業主に比べて支払う税金の種類も多く、法人登記の手続きには20万円程度の費用も発生します。
そのため、事業規模が小さいうちは個人事業主として始める方が多く、事業の成長に合わせて法人化していくのが一般的です。
個人事業主になるための手続き
個人事業主になるには、いくつかの手続きが必要です。特に重要な3点を紹介します。
- 開業届
- 青色申告承認申請書
- インボイス制度の登録
開業届
事業を始める際には開業届の提出が必須です。個人事業主に関わらず、所得には納税の義務が発生します。
1年間の売上から経費を差し引いて得た所得を、確定申告により報告しなければなりません。
開業届を提出していない場合、経費が認められず売上は雑所得として計上され、納税額が大きくなる可能性があります。
開業届の提出は、事業開始から1ヶ月以内が原則ですので、忘れずに準備しておきましょう。
青色申告承認申請書
青色申告承認申請書とは、青色申告にて確定申告するために必要な申請です。
そもそも、確定申告には青色申告と白色申告があります。
白色申告は、簡単な帳簿の作成で済みますが、所得の控除が受けられません。
対して青色申告は、帳簿を複式簿記と呼ばれる複雑なもので作成する必要があるものの、最大で65万円の所得を控除してくれるものです。
初年度は開業届と合わせて青色申告承認申請書を提出しましょう。
インボイスの登録
消費税の請求・還付の仕組みを利用するためには、インボイス制度の登録が必要です。
この制度に参加することで、取引先との間で消費税の取扱いが明確になります。
これらの手続きは、個人事業主の税務の管理に関連するものですので、適切な手続きを行うことがスムーズな事業運営につながります。
個人事業主の開業後の義務と注意点
開業後は事業と並行して進めなければならないことがあります。それは経理と税務です。
また、事業規模が大きくなるのであれば、法人化も視野に入れておく必要があるので、この項ではそれらについて解説します。
税金の申告方法
日本では翌年の3月15日までに所轄の税務署へ確定申告が義務付けられています。
また、事業の収支には、消費税の算出が必要です。アルコール製品を製造・販売する場合には、酒税も対象です。
事業によっての申請も異なる場合はありますので、十分に下調べしておきましょう。
必要な経費の管理
経費を正確に管理することで、税金の計算時に適切な権利を受けることができます。
レシートや領収書は丁寧に保管し、必要に応じて分類することが重要です。
青色申告を利用する場合、さらに詳細な帳簿の記録が求められます。
これまで経理に携わってこなかった方は、会計ソフトサービスの利用を検討するのもいいでしょう。
事業の成長に伴う手続き
事業が成長すると、考えられるケースがいくつかあります。
- 従業員を雇う
- 法人化
従業員を雇用する際には、労働法に基づく義務が発生します。
社会保障や賃金・有給・労働条件など、会社規則の整備が必要です。
さらに法人化が伴えば、法人税の申請や雇用保険などさまざまな申請や管理が必要になるため、事業計画を立てて法人化に備える準備をしておきましょう。
フリーランスとしての個人事業主
一般的に事業で生計を立てている方を、どこにも所属していないとしてフリーランスと呼びます。
フリーランスを考えている方に向けて、特徴や注意点を紹介します。
フリーランスの特徴と注意点
フリーランスの特徴は、自由な働き方です。
自分でスケジュールを管理でき、多様なクライアントとの契約が可能で、収入の増減も自分次第です。
しかし、個人でのリスク管理が求められ、長期の契約がない場合の収入の不安定さ、
健康保険や年金などの社会保険への自己負担が重くなる可能性があります。
必要なスキルや準備
専門技術的な知識はもちろん、コミュニケーション能力や時間管理のスキルが重要です。
事業によって異なりますが、営業やマーケティングの能力も求められることが多く、経営ノウハウなどの勉強も行いましょう。
その一環として、ポートフォリオの整備、契約書テンプレートや請求書作成、税務や法律に関する基礎知識も準備しておくと、スムーズに業務獲得に繋がりやすくなります。
フリーランスとしての個人事業主は、多くの自由を享受できる一方、自らがビジネスの全てを担当する必要があるため、幅広いスキルや知識が求められます。自己啓発やコミュニティ参加などを積極的に行うことで、成功への道を切り開くことができます。
副業・兼業としての個人事業主
国が副業を推奨したことを発端に、副業や兼業を許可する企業の増加やリモートワークなどの働き方の多様化によって、個人事業主は近年増加傾向にあります。
会社員が副業を行う場合の注意点を紹介します。
会社員としての注意点
一部の企業では、副業に関して届出が必要、または就業規則で副業を禁止している場合があります。
会社員は、就職時に会社と雇用契約を結んでいます。その中には「規則を遵守する」と明記されている場合がほとんどです。
そのため、規則を破って副業すると会社とのトラブルに発展する可能性があるので十分に就業規則を確認しましょう。
また、副業で得た収入の確定申告の扱いについても会社に確認しておくといいでしょう。
二つの仕事の両立方法
二つの仕事を継続することで体力的、精神的な負担が増大することも考えられます。
十分な休息が取れず、寝坊や体調不良などによって業務に支障がないようスケジュール調整が重要です。
どちらの仕事を優先するか明確にし、タスクの自動化や外注など、効率的に仕事を進めることが求められます。
副業・兼業としての個人事業主として成功するためには、計画的な行動と自分自身の健康管理が鍵となります。
主婦(夫)や扶養内での個人事業主
扶養内で事業を行う場合は、主に所得の金額に注意が必要です。
中途半端な利益で扶養から外れてしまうと、扶養内の時よりも税金が高くなってしまう場合もありますので、下述を参考にしてください。
扶養の範囲と注意点
扶養の範囲内で働く場合、一定の収入の上限が設定されています。
この金額を上回ると、扶養から外れてしまい、社会保険や税金の取り扱いが変わります。
扶養の範囲は以下の通りです。
- 103万円を超えた場合(健康保険・年金が外れる)
- 130万円を超えた場合(所得税・住民税が発生)
- 150万円を超えた場合(配偶者控除または配偶者特別控除の適用外)
扶養から外れた場合はさまざまな支払い義務が発生します。
扶養内にいる主婦(夫)の方は事業規模と照らし合わせて検討しておきましょう。
扶養を超えた場合の手続き
扶養の範囲を超えた場合、健康保険や国民年金の加入が必要となります。
被扶養者の会社への届出や、自治体への申請手続きを行いましょう。
まとめ
開業して個人事業主になりたい方は、開業届と青色申告承認申請書を所轄の税務署へ提出しましょう。
始める事業内容やフリーランス・副業などの状況によって、税金や健康保険などの扱いが変わってきます。
事前に事業についてや、従事している会社の規則などの下調べが重要です。
開業のハードルは低く誰でも個人事業主になれますが、その後事業を継続するためにも、税や経理などについてしっかりと把握しましょう。